東京高等裁判所 昭和25年(ム)2号 判決
再審原告 尾沢義之助
再審被告 信州山中麻加工組合
一、主 文
本件再審の訴を却下する。
訴訟費用は再審原告の負担とする。
二、理 由
本件再審の申立の理由は「其後長野縣告示第千十八号ノ統制法規ノ第五條ヲ檢スルニ証人ノ証言シタルガ如キ規定ナキヲ以テ其点ガ即チ僞証ナルタメニ敗訴ノ判決ヲ受ケタル者ナリ其証言ハ原告ハ長野縣告示第千十八号ノ統制規則ノ改正ニヨリ被告組合へ加入セザレバ営業ガデキナクナツタカラ再三説明シテモ之ニ應ゼズ爲メニ原料麻ヲ入手スルヲ得ズ自然廃業ノ止ムナキニ立至リタル者ダト証言ナシタリ依テ証拠トシテ長野縣告示第千十八号ノ統制規則ヲ長野縣廳ヨリ裁判所ニ於テ御取寄相成度御願ヒ致シマス其上ニ於テ御審理相成度訴状提出ニ及候」というにある。
再審は判決に民事訴訟法第四百二十條に定める事由がある場合にその判決をした裁判所に限りこれに対して其の訴を起すことができるものであつて、上告審の判決に対してその訴をするには、その上告審の手続及判決に所定の法令に背いた事柄がある場合でなければならない。本件再審の訴は昭和二十二年四月十五日言渡された大審院同年(オ)第二号事件の判決を不服ある判決とするものであるが、その訴状の不服の理由によると昭和十六年十二月十五日長野縣告示第千十八号の麻の統制規則第五條には証人の証言したような規定がないから此点において僞証たることが明かでありそのため再審原告は敗訴したものであるとあり、これだけでは其趣旨が判りかねるが、なお本件記録に照らし合せて見ると其本旨は右告示(乙第三号証長野縣苧麻大麻等統制規則取扱要項)には再審被告組合に加入せざれば原料麻を入手するを得ずという規定はないのにそれがある如く述べた虚僞の証言を基礎として再審原告が組合に加入しないため、原料麻を入手出來ず自然に廃業のやむなきに至つたとなされた判決の事実認定は誤認であるから更に右告示を取寄せた上此点について審理裁判を求めるというのであると考えられる。
しかしながら本件の場合大審院では自ら事実認定をする職責はなく、事実審である第二審裁判所が証拠の判断事実の認定についてもつている專権によつて確定した事実を基礎として第二審判決は法令の違背がないかどうかを上告理由の範囲で審理すれば足るのであつて本件前示判決もこの趣旨に則つて判決したものに過ぎない。故に再審原告の主張する虚僞の証言を証拠として事実を認定したというような事は上告審のなすべき審理の外のことであり從つてこの事由を以て上告審判決に対し再審を求めることはできないものといはなければならない。
其他前記法條の何れの事由にも該当するものでないから本件再審の訴は正当な事由を具えるものと認め難く到底却下を免れない。
よつて、民事訴訟法第四百二十三條、第四百一條、第九十五條、第八十九條に則り主文の通り判決する。
(裁判官 中島登喜治 小堀保 薄根正男 原増司 猪俣幸一)